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転職を決められないのはなぜ?|不確実性に弱い脳と後悔しない判断の作り方

転職を決められないのはなぜ?|不確実性に弱い脳と後悔しない判断の作り方 キャリアの話

「You can’t make decisions based on fear and the possibility of what might happen.」
(恐れや、起こるかもしれないことだけを基準にして決断することはできない)
— Michelle Obama

はじめに

「転職した方がいいのかもしれない」

そう思っているのに、なかなか決められない。

求人サイトを見ても、応募ボタンを押せない。
転職エージェントに登録しようとしても、途中で手が止まる。
今の職場に残ると決めたわけでもないのに、結局いつも同じ毎日を続けてしまう。

このような状態になると、

「自分は決断力がないのではないか」
「覚悟が足りないのではないか」
「本当は転職したくないだけなのではないか」

と自分を責めてしまうことがあります。

しかし、転職を決められない背景には、単なる優柔不断ではなく、「不確実性への不安」が関係していることがあります。

転職先が本当に合うか。
人間関係は大丈夫か。
収入は維持できるか。
後悔しないか。
今より悪くならないか。

これらは、どれだけ考えても100%の答えは出ません。

この記事では、転職を決められない心理を、不確実性・不安・回避行動の観点から整理し、後悔しにくい判断を作るための考え方を解説します。

転職を決められないのは、意志が弱いからではない

まず大切なのは、転職を決められない自分を「弱い」と決めつけないことです。

転職は、生活・収入・人間関係・将来設計に関わる大きな判断です。

悩むのは自然です。
迷うのも自然です。
怖くなるのも自然です。

むしろ、何も考えずに勢いだけで決めてしまう方が危うい場合もあります。

問題は、迷うこと自体ではありません。

問題は、迷い続けることで心身が消耗し、何も選べない状態に固定されてしまうことです。

この状態では、転職するかどうか以前に、判断するためのエネルギーが失われていきます。

不確実性が高いほど、人は不安になりやすい

人間の脳は、未来を予測しながら行動しています。

「こうすれば、こうなるだろう」
「この選択をすれば、この結果が起きるだろう」

という予測があるから、安心して動けます。

しかし、転職のように結果が読みきれない選択では、予測が不安定になります。

このとき脳は、「分からない」という状態そのものを危険として扱いやすくなります。

不確実性が高い状況では、心配・不安・過剰なシミュレーションが起きやすくなることが報告されています。[1]

つまり、転職を前にして不安が強まるのは、あなたの性格だけの問題ではありません。

未来が読めない状況に対して、脳が警戒反応を起こしているのです。

「失敗したくない」が強くなると、判断は止まりやすい

頭の中の問いの中心が「どうすれば良くなるか」ではなく、「どうすれば失敗を完全に避けられるか」になると、判断は止まりやすくなります。

なぜなら、転職において失敗の可能性をゼロにすることはできないからです。

失敗の可能性をゼロにしようとすると、必要な情報は無限に増えます。

もっと調べなければ。
もっと比較しなければ。
もっと確信が持てるまで待たなければ。

そうしているうちに、判断は先延ばしされていきます。

仕事選びでは、直感や思い込みだけでなく、何を基準に職業を選ぶのかを整理することが重要です。職業選択を科学的に考える視点は、転職判断で不安に飲み込まれないための助けになります。[5]

回避すると一時的に安心するが、迷いは長引く

不安が強いとき、人は不安の原因から距離を取ろうとします。

求人サイトを閉じる。
転職の話題を避ける。
エージェントへの返信を後回しにする。
職務経歴書を書こうとしても別の作業を始める。

これらは、回避行動です。

回避すると、その瞬間は少し楽になります。

考えなくて済む。
怖い情報を見なくて済む。
決めなくて済む。

しかし、回避による安心は一時的です。

根本の問題は残ったままなので、しばらくするとまた同じ不安が戻ってきます。

不安と回避行動は、互いに強め合うことがあります。[2]

転職の不安も同じです。

見ないようにすればするほど、転職というテーマが頭の中で大きくなっていきます。

決められない人に必要なのは「正解」ではなく「判断基準」

転職で後悔したくない人ほど、「正解」を探そうとします。

しかし、転職には絶対的な正解がありません。

同じ会社でも、ある人には合い、別の人には合わない。
同じ職種でも、ある時期には良く、別の時期には負担になる。
同じ条件でも、何を重視するかによって評価は変わる。

だからこそ必要なのは、正解探しではなく、判断基準です。

判断基準がないまま求人を見ると、すべてが比較対象になります。

年収。
勤務地。
知名度。
福利厚生。
働き方。
職場の雰囲気。
将来性。
成長機会。

すべてを完璧に満たす求人は、ほとんどありません。

その結果、「どれも良さそうで、どれも不安」という状態になります。

まず必要なのは、自分にとって何を守るべきかを決めることです。

転職では、求人情報の量を増やすだけでは迷いが深まることがあります。大切なのは、情報を判断するための思考の軸を持つことです。[7]

転職判断で最初に確認すべき3つの軸

転職を考えるときは、いきなり求人を見る前に、次の3つを整理することが大切です。

1つ目は、今の職場で何が限界なのか。

人間関係なのか。
仕事内容なのか。
評価制度なのか。
労働時間なのか。
将来性なのか。
体調への影響なのか。

ここが曖昧なまま転職すると、次の職場でも同じ不満を繰り返すことがあります。

2つ目は、次の職場で何を優先したいのか。

年収なのか。
安定なのか。
裁量なのか。
専門性なのか。
人間関係の穏やかさなのか。
働き方の自由度なのか。

優先順位がないと、条件比較に振り回されます。

3つ目は、何があれば「今回は動いてよい」と判断できるのか。

例えば、
応募したい求人が3件見つかったら動く。
職務経歴書が完成したら応募する。
現職で改善余地がないと確認できたら転職活動を始める。
体調への悪影響が続くなら環境変更を優先する。

このように、行動開始の条件を決めておくことが重要です。

転職をキャリア行動として捉えると、「辞めるか・残るか」の二択だけではなく、情報収集・相談・比較・検証といった段階的な行動に分けて考えやすくなります。[6]

「転職するかどうか」ではなく「検証する」と考える

転職に不安がある人は、最初から「転職するかどうか」を決めようとしがちです。

しかし、これは負荷が高すぎます。

転職活動を始めることと、実際に転職することは同じではありません。

求人を見る。
職務経歴書を書く。
エージェントに相談する。
カジュアル面談を受ける。
面接で話を聞く。

これらは、すべて「検証」です。

転職するかどうかを今すぐ決める必要はありません。

まずは、自分の市場価値を知る。
選択肢があるか確認する。
今の職場と比較する材料を集める。
外の世界を見たうえで、残る選択肢も含めて判断する。

そう考えると、心理的な負担は少し下がります。

転職活動は、退職の宣言ではありません。
自分の選択肢を確認するための情報収集です。

後悔しにくい判断は「完璧な判断」ではない

後悔しにくい判断とは、完璧な未来を保証する判断ではありません。

後悔しにくい判断とは、「その時点で必要な情報を集め、自分の基準に照らして選んだ」と言える判断です。

未来の結果は完全には読めません。

だからこそ、判断の質は結果だけでなく、判断プロセスで決まります。

自分は何に困っていたのか。
何を変えたかったのか。
どの条件を重視したのか。
どのリスクを受け入れたのか。
どのリスクは避けたいと考えたのか。

ここを言語化しておくと、たとえ結果が思い通りでなかったとしても、「あのときの自分は、必要な判断をした」と受け止めやすくなります。

また、転職判断ではすべての条件を同時に満たそうとすると迷いが深くなります。「何を選び、何を手放すのか」を決める視点は、判断の負担を減らすうえで有効です。[8]

今日からできる一歩

今日やることは、転職するかどうかを決めることではありません。

まず、紙やメモアプリに次の3つを書き出してください。

  1. 今の職場で、これ以上続くと苦しいこと
  2. 次の職場で、最低限守りたい条件
  3. 転職活動を始めてもよいと思える小さな条件

例としては、次のような形です。

  1. 上司の機嫌に振り回され、毎朝強い不安がある
  2. 年収よりも、心理的安全性と残業時間の少なさを優先したい
  3. 気になる求人を3件保存できたら、職務経歴書を書き始める

このように書くと、「転職するかどうか」という大きすぎる問いが、「何を確認すればよいか」という小さな問いに変わります。

不安は、未来が見えないと大きくなります。

しかし、次に確認することが見えると、不安は少し扱いやすくなります。

まとめ

転職を決められないのは、意志が弱いからとは限りません。

転職は不確実性が高い選択です。
未来が読めないからこそ、不安が強まり、失敗を避けようとして、判断が止まりやすくなります。

しかし、正解が見つかるまで待つ必要はありません。

必要なのは、完璧な確信ではなく、自分なりの判断基準です。

今の職場で何が限界なのか。
次の職場で何を守りたいのか。
何が確認できれば動けるのか。

この3つを整理するだけでも、転職の不安は「漠然とした怖さ」から「検討できる課題」に変わっていきます。

転職は、人生を一発で決める賭けではありません。

自分の状態を確認し、選択肢を広げ、納得できる方向へ進むためのプロセスです。

不安をゼロにしてから動くのではなく、不安を整理しながら、小さく確認していく。

それが、後悔しにくい転職判断の第一歩です。

参考文献・参考書籍

[1] Gu, Y., Gu, S., Lei, Y., & Li, H. From Uncertainty to Anxiety: How Uncertainty Fuels Anxiety in a Process Mediated by Intolerance of Uncertainty. Neural Plasticity, 2020.
NCBIリンクパス:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7704173/
概要:不確実性が不安を高める過程に、不確実性への耐性の低さが関係することを整理した論文です。

[2] Aupperle, R. L., & Paulus, M. P. Neural systems underlying approach and avoidance in anxiety disorders. Dialogues in Clinical Neuroscience, 2010.
NCBIリンクパス:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3181681/
概要:不安が接近行動や回避行動にどのように関係するかを、神経システムの観点から整理した論文です。

[3] Brown, V. M., et al. Anxiety as a disorder of uncertainty. NeuroImage: Clinical, 2023.
NCBIリンクパス:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10475148/
概要:不安を「不確実性への反応」として理解する視点を提示した論文です。

[4] Appel, H., et al. Intolerance of uncertainty causally affects indecisiveness. Journal of Behavior Therapy and Experimental Psychiatry, 2025.
NCBIリンクパス:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12334985/
概要:不確実性への耐性の低さが、決断困難に影響しうることを示した研究です。

[5] 鈴木祐『新版 科学的な適職――4021の研究データが導き出す 最高の職業の選び方』クロスメディア・パブリッシング, 2025.
リンクパス:https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784295411468
概要:仕事選びで陥りやすい思い込みを避け、研究データをもとに職業選択を考えるための本です。

[6] 中原淳・小林祐児・パーソル総合研究所『働くみんなの必修講義 転職学――人生が豊かになる科学的なキャリア行動とは』KADOKAWA, 2021.
リンクパス:https://www.kadokawa.co.jp/product/322007000261/
概要:転職を単なる退職・再就職ではなく、キャリア形成の行動として捉えるための本です。

[7] 北野唯我『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』ダイヤモンド社, 2018.
リンクパス:https://www.diamond.co.jp/book/9784478105559.html
概要:会社に残るか転職するかを、市場価値や働き方の軸から整理するための本です。

[8] グレッグ・マキューン『エッセンシャル思考――最少の時間で成果を最大にする』高橋璃子訳, かんき出版, 2014.
リンクパス:https://kanki-pub.co.jp/pub/book/9784761270438/
概要:転職判断で「あれもこれも」と迷う状態から抜け出し、自分にとって本当に重要な条件を見極める助けになる本です。

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