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転職してはいけないタイミング|後悔する人の共通点

転職してはいけないタイミング|後悔する人の共通点 ストレスの話

「もう無理だ」「今すぐ辞めたい」

そう思って逃げるように転職を決めた結果、数ヶ月後に「なぜあのとき辞めたのか」と後悔することは避けたいです。

実は、強いストレスや不安の中での判断は、脳の働きによって大きく歪むことが知られています(※1)。

つまり、「冷静に考えて決めたつもり」でも、その前提自体が崩れている可能性があります。

転職は人生を大きく変える重要な決断です。だからこそ、判断する”タイミング”が結果を左右します。


なぜこのタイミングで転職すると失敗するのか

① 判断基準が「逃避」になっている

本来の転職は、

  • 何をしたいか
  • どんな環境で働きたいか

といった前向きな基準で行うべきです。

しかし、ストレスが強い状態では、

  • とにかく今の環境から離れたい
  • 目の前の苦しさを消したい

という気持ちが強くなります。

問題は、「逃げること」ではありません。問題は、「逃げるために判断していること」です。

この状態では、

  • どこに行くか

ではなく

  • どこから離れるか

で意思決定してしまいます。

その結果、環境を変えても同じ問題に直面する可能性が高くなります。

「転職への迷いが消えない」という状態が続いているなら、まず思考を整理することが重要です。転職するべきタイミングも参考にしてみてください。

② 比較対象を正しく見れなくなる

ストレス状態では、認知が歪みます(※2)。

  • 今の職場 → 必要以上に悪く見える
  • 転職先 → 実態以上に良く見える

これは冷静な比較ではなく、感情による補正です。

特に、

  • 「今が最悪だ」という思い込み
  • 「環境を変えればすべて解決する」という期待

が強くなる傾向があります。この「認知の歪み」のしくみについては、思考の歪みがストレスを生み出す仕組みでくわしく解説しています。

③ 長期視点が消える

ストレス下では、脳の前頭前野の働きが低下し、長期的な視点での判断が難しくなります(※1)。

その結果、

  • 将来のキャリア形成
  • スキルの蓄積
  • 市場価値

といった重要な要素が抜け落ちます(※6)。

そして、「今楽になるかどうか」という短期的な基準に偏ります。


よくある「危険な状態」(あるある)

以下に当てはまる場合は、判断が歪んでいる可能性があります(※3)。

  • 上司の一言で「もう限界」と感じる
  • 月曜の朝になると転職サイトを開く
  • 休日でも仕事のことが頭から離れない
  • 「ここから逃げたい」という気持ちが強い
  • 他の選択肢をほとんど検討していない

これらはすべて、強いストレス状態のサインです。

こうした状態が続いているなら、自分がバーンアウトに近い状態にないかを確認することも大切です。燃え尽き症候群とは何かに判断の目安をまとめています。


実際に起こる転職後の失敗

ストレス状態での転職は、以下のような結果になりがちです。

  • 思ったより環境が変わらない
  • 人間関係の問題はどこでも発生する
  • 業務内容が想定と違う
  • 「前の職場の方がよかった」と感じる

例えば、

  • 人間関係が原因で転職 → 新しい職場でも同じ悩みが発生する
  • 業務が辛くて転職 → 別の種類のストレスに直面する
  • 評価に不満で転職 → 評価制度そのものは大きく変わらない

このように、「問題の本質」が変わらないまま転職すると、同じパターンが繰り返されます。

特に、ストレスの原因が環境ではなく自分の状態にある場合、環境を変えても問題は解決しません。


ではどうすればいいか

① まずは状態を整える

最優先は「判断」ではなく「回復」です(※5)。

  • 睡眠を確保する
  • 休息を取る
  • 一時的に距離を取る

判断力は、状態に強く依存します。

② 判断を一度保留する

「今決めない」という選択を取ります。

ストレス状態では、「早く決めたい」という衝動が強くなります。しかし、それ自体がストレス反応です(※4)。

③ 小さな行動から始める

いきなり転職を決めるのではなく、

  • 情報収集
  • 自分のスキル整理
  • 転職市場の確認

など、リスクの低い行動から始めます。

スキルの棚卸しや自分の強みを整理する方法については、キャリアの棚卸しとは何かに具体的な手順をまとめています。


例外|転職すべきケース

以下のような場合は例外です。

  • 明確なハラスメントがある
  • 健康に影響が出ている
  • 違法な労働環境

この場合は、早めの離脱も合理的な判断です。

ただしその場合でも、「焦って次を決める」のではなく、段階的に進めることが重要です。


今日からできる小さな一歩

「今の自分は冷静な状態か」を一度だけ確認してみてください。

0点(まったく冷静でない)から10点(完全に冷静)で自分に点数をつけてみる。それだけで構いません。

7点以上であれば、転職について調べ始めることは問題ありません。しかし6点以下であれば、まず状態を整えることを優先してください。判断は、状態が戻ってからでも遅くはありません。


まとめ

  • ストレス状態での転職判断は歪みやすい
  • 「逃げたい」という気持ちは判断基準にならない
  • 環境を変えても問題が繰り返されるケースは多い

重要なのは、「今の状態で判断していいか」です。

転職するかどうかよりも先に、

  • 自分は冷静な状態か
  • 不安ではなく意思で判断できているか

を確認する必要があります。

判断の質は、情報ではなく「状態」で決まります。

転職の判断では、「してはいけないタイミング」だけでなく、「していいタイミング」も合わせて理解することが重要です。転職するべきタイミング転属と転職どちらを選ぶべきか?もあわせてご覧ください。


参考文献

※1 Arnsten AFT, Shanafelt T. Physician Distress and Burnout: The Neurobiological Perspective. Mayo Clin Proc. 2021 Mar;96(3):763-769.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33673923/
コントロール不能なストレスが前頭前皮質の機能を障害し、高次の意思決定・長期視点・洞察力を低下させるメカニズムを神経科学の観点から解説した論文。

※2 Warren SL, Zhang Y, Duberg K, et al. Anxiety and Stress Alter Decision-Making Dynamics and Causal Amygdala-Dorsolateral Prefrontal Cortex Circuits During Emotion Regulation. Biol Psychiatry. 2020;87(9):843-855.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32331823/
不安とストレスが扁桃体から前頭前皮質への神経回路に影響を与え、意思決定のダイナミクスを歪めることを脳画像研究で示した論文。

※3 Kavaliauskas P, Nomeikaite A, Gelezelyte O, Kazlauskas E, Smailyte G. Work-related stressors and psychological distress predict career change ideation among Lithuanian healthcare workers. Int J Occup Med Environ Health. 2024;37(3):277-291.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38975635/
職場ストレスと心理的苦痛が職業転換の検討を有意に予測することを示した研究。苦痛が高いほど転職志向が強まる一方、その状態での判断には歪みが生じやすいことを示唆している。


参考書籍

※4 ダニエル・カーネマン 著「ファスト&スロー(上・下)」早川書房(2012)
ノーベル賞受賞の行動経済学者による著作。感情的・直感的な判断(速い思考)と論理的・熟慮的な判断(遅い思考)の違いを解説し、ストレス下でいかに判断が歪みやすいかを理解するための土台となる一冊。

※5 ケリー・マクゴニガル 著「スタンフォードのストレスを力に変える教科書」大和書房
ストレスへの向き合い方を変えることで心身への悪影響を減らせることを科学的根拠をもとに説いた一冊。「今すぐ逃げたい」という状態を整えるうえでの視点を提供してくれる。

※6 クレイトン・M・クリステンセン 著「イノベーション・オブ・ライフ──ハーバード・ビジネス・スクールを巣立つ君たちへ」翔泳社
感情的な衝動ではなく、長期的な目標と価値観に基づいてキャリアを選択することの重要性を説いた一冊。「今すぐ動くべきか」を問い直す際の視点を与えてくれる。


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