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成果を出しても報われない?「静かな退職」が急増する本当の理由

キャリアの話

プロジェクトが、無事に終わった。

クライアントも喜んでいた。チームの中で自分の責任をきっちりと果たし、「やりきった」という充実感がありました。

そんな安心感の中で、突然、出向を言い渡されました。

「なぜ今?」「なぜ自分が?」という問いが頭をぐるぐると回りました。新しい職場に移ってみると、なんとなく”火中の栗”のような扱いを受けている感覚があり、孤立しているようにも感じました。

頑張ったのに、報われなかった。成果を出したのに、評価されなかった。そんな経験が積み重なったとき、人は自然と「もう、必要以上には頑張らなくていい」という気持ちへと向かっていきます。

これが、今急増している「静かな退職」の入口です。

この記事では、私自身の体験をもとに、なぜ今「静かな退職」が急増しているのか、その本当の理由を整理していきます。


「静かな退職」とは何か、まず整理しておく

「静かな退職(クワイエット・クィッティング)」とは、実際に仕事を辞めることではありません。

会社に籍を置いたまま、「決められた仕事を、決められた時間だけこなす」という働き方のことです。残業はしない。求められた以上のことはしない。感情的なコミットメントも最小限にとどめる。

一見すると「やる気がない」ように聞こえるかもしれません。しかし実態は、もう少し複雑です。

2026年の調査では、正社員の約46%が何らかの形で「静かな退職」の状態にあるとされています(※1)。また2025年の研究では、静かな退職は「必要最低限しかしない行動面」と「感情的なコミットメントを下げる心理面」の2つから構成されることが明らかにされています(※2)。

これほど多くの人が選んでいるとしたら、それは怠慢ではなく、何か別の理由があるはずです。


成果と評価がかみ合わない、職場の構造的な問題

「成果を出せば評価される」という信念は、多くの人が仕事のモチベーションとして持っています。

しかし現実には、成果と評価が一致しないことがあります。私自身も、そのひとりでした。

なぜこうしたズレが生まれるのか。背景にある構造的な問題を、3つ整理してみます。

① 評価は「誰が見るか」に左右される

どれだけ質の高い仕事をしても、評価するのは人間です。直属の上司の価値観や組織の方針によって、同じ成果でも評価は大きく変わります。「プロジェクトの結果」よりも普段からの会社との関係性が評価に影響するケースは、珍しいことではありません。

② 組織の都合は、個人の貢献とは別に動く

出向や異動は、多くの場合「個人の評価」とは別の論理で決まります。人手が不足している部署への補充、ポストの調整、経営層の判断。これらは個人の実績とは切り離されたところで起きます。

成果を出した直後に出向を告げられるのは、「あなたが評価されていないから」ではなく「組織がそう判断した」だけのことである場合が、多くあります。

③ 貢献が「見える化」されていない

チームの中で責任を果たしていても、その貢献が数字や言語として記録されていなければ、評価に反映されにくくなります。「やって当たり前」とみなされる仕事は、とりわけ見えにくいです。

25,285名を対象にした研究では、従業員の仕事への意欲に最も影響を与える要因として「成果への認識(Recognition)」が挙げられており、認識されない状態が静かな退職を引き起こす大きな要因であることが示されています(※3)。


「静かな退職」は、心が選ぶ最後の自衛手段

静かな退職は、最初から選ぶものではありません。

多くの場合、「頑張ること」と「期待すること」を繰り返した末に、心が自然とブレーキをかけ始めた結果です。

「期待するから傷つく。なら、期待しなければいい」

この心理的な防衛反応が、静かな退職の正体です。成果を出しても報われない経験が重なるほど、この感覚は強くなっていきます。

職場における心理的安全性の研究によれば、「報われない」と感じた人が行動を抑制するのは、対人リスクを回避する自然な防衛反応であるとされています(※4)。

大切なのは、この状態を「悪いこと」と決めつけないことです。

心が自衛モードに入っているのには、ちゃんと理由があります。その理由を無視して「もっと頑張れ」と言い続けることは、かえって心を追い詰めることになります。

一方で、静かな退職の状態が長く続くと、「このままでいいのか」という漠然とした不満だけが残り続けることもあります。

大切なのは、まず自分の状態に気づき、次にどう動くかを自分で選べるようにすることです。


今日からできる小さな一歩

静かな退職の状態にあると気づいたとき、焦る必要はありません。

まず、自分の気持ちを言語化することから始めてみてください。

今日試してほしいこと

ノートでもスマホのメモでも構いません。以下の問いに、思いつくままに答えてみてください。

  • 「なぜ今、仕事への意欲が落ちているのか」
  • 「どんなことが、自分にとって納得できなかったのか」
  • 「今の職場で、まだ自分がやりたいことはあるか」

答えはすぐに出なくていいです。3行だけ書けたなら、それが最初の一歩です。

気持ちを整理することで、「このまま静かな退職を続けるのか」「別の道を探すのか」を、自分で選べるようになります。選択肢は、思っているよりも多いはずです。


まとめ

この記事では、私自身の出向体験をもとに、「静かな退職」が急増する本当の理由を整理しました。

  • 成果と評価は、必ずしも一致しない構造が職場には存在する
  • 「静かな退職」は怠慢ではなく、心の自衛反応であることが多い
  • まず自分の状態に気づき、次の選択を自分で考えることが大切

成果を出しても報われなかったと感じたとき、その気持ちは正直なものです。あなたの努力は、無駄ではありませんでした。ただ、評価される場所や仕組みが、あなたの貢献と合っていなかっただけかもしれません。

次の記事では、キャリア停滞を感じたときに「静かな退職」を選ぶ前に考えてほしいことをお伝えします。
キャリア停滞を感じたとき「静かな退職」を選ぶ前に考えること


参考文献

学術論文

※1 マイナビキャリアリサーチLab「正社員の静かな退職に関する調査2026」
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20260413_109736/

※2 Patel PC, et al. “A multidimensional quiet quitting scale: Development and test of a measure of quiet quitting.” PLOS ONE, 2025.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40233122/

※3 ”The impact of recognition, fairness, and leadership on employee outcomes: A large-scale multi-group analysis.” PLOS ONE, 2025.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39787185/

※4 Edmondson AC. “Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams.” Administrative Science Quarterly, 1999.

※5 Geng Z, et al. “Identifying Key Antecedents of Quiet Quitting: A Cross-Profession Meta-Analytic Review.” Journal of Advanced Nursing, 2025.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40167291/

※6 Wiley et al. “The quiet quitting scale: Development and initial validation.” American Journal of Public Health, 2024.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10764970/

調査・統計

※7 厚生労働省「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査」
https://www.mhlw.go.jp/chushoukigyou_kaizen/investigation/report.pdf

参考書籍

  • 徳谷智史『キャリアづくりの教科書』ニューズピックスパブリッシング、2023年
  • 『キャリア形成に活かす心理学』誠信書房

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