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キャリア停滞を感じたとき「静かな退職」を選ぶ前に考えること

キャリアの話

このまま、この職場にいていいのかな?

昇進のめどが立たない。新しいスキルが身についている気がしない。毎日同じことを繰り返しているだけで、仕事が前に進んでいる実感がわかない。

こうした「キャリア停滞」の感覚は、30代から40代の会社員に広く見られます。そしてこの感覚が長く続くと、「静かな退職」という選択肢が浮かんできます。

でも、その前に少しだけ立ち止まって考えてみてほしいことがあります。この記事では、キャリア停滞を感じているときに整理しておきたい問いを、3つお伝えします。


キャリア停滞とは何か、まず言葉を整理する

キャリア停滞(キャリアプラトー)とは、昇進・スキルアップ・役割の拡大といった成長の機会が止まったように感じる状態のことです。

研究では、キャリア停滞は大きく2種類に分類されています。「階層的停滞(これ以上昇進できない状態)」と「職務内容停滞(仕事の中身が変わらない状態)」です(※1)。どちらも当事者にとっては「動けない感覚」として現れますが、原因と対処法は異なります。

実態としても、キャリア停滞は職務満足度の低下と密接に関係しています。ある研究では、キャリア停滞が職務満足度の34%、昇進可能性の認識の18%を説明するという結果が出ています(※2)。

大切なのは、「自分がダメだから停滞しているのか」「組織の構造的な問題なのか」を、冷静に切り分けることです。


「静かな退職」が選ばれる理由

キャリア停滞を感じている人が「静かな退職」に向かうのは、自然な流れとも言えます。

日本の調査では、2025年時点で「静かな退職」状態にある人が過去最高水準に達しており、その背景には「成長重視から生活との調和へ」という価値観の変化があるとされています(※3)。

「これだけ頑張っても変わらないなら、頑張る理由がない」という気持ちは、決して甘えではありません。

ただし、静かな退職は問題を解決するわけではありません。職場への不満を一時的に和らげる効果はありますが、「自分のキャリアをどうしたいか」という問いには答えてくれないのです。

だからこそ、選択する前に、自分の状況を整理しておくことが大切です。


静かな退職を選ぶ前に、考えておきたい3つの問い

問い① 停滞の原因は、自分にあるか・組織にあるか

まず確認したいのは、「停滞の原因がどこにあるか」です。

組織的公正性(評価の公平さ)が確保されていない職場では、どれだけ個人が努力しても停滞感が解消されにくいことが研究で示されています(※4)。つまり、停滞の原因が組織側にある場合、自分の努力だけでは限界があるということです。

自分のスキルや行動が原因であれば、改善の余地があります。一方、組織の評価制度や上司の判断が原因であれば、環境を変えることを視野に入れる必要があります。

どちらとも言い切れない場合もありますが、「自分のせいだ」と決めつけてしまうと、必要のない自己否定が生まれます。まずは冷静に原因を切り分けることが非常に大切です。

問い② 今の職場で、自分がやりたいことはまだあるか

停滞を感じているとき、「やりたいことが何もない」という状態になっていることがあります。

ただ、それは「本当にない」のか、「疲れて見えなくなっている」だけなのかを確かめてみてください。

リクルートワークス研究所の調査によれば、自己啓発をしている人の成長実感は44.2%であるのに対し、していない人は20.5%にとどまります(※5)。成長の機会を自分から作り出すことで、停滞感が変わることがあります。

少し視点を変えて、「この職場でどんな経験を積めるか」「どんなスキルが身につくか」を改めて考えると、見え方が変わることがあります。

問い③ 転職や別の選択肢を、一度でも真剣に考えたか

静かな退職は「今の職場に残る」という選択です。

もし「転職」「副業」「異動希望」といった別の選択肢を一度も真剣に検討していないなら、それらを比較した上で「残る」という選択をすることで、気持ちが変わることがあります。

選択肢を知った上で選ぶのと、選択肢を知らずに留まるのとでは、心の余裕がまるで違います。


今日からできる小さな一歩

3つの問いに、すべて答える必要はありません。

まず1つだけ、自分に問いかけてみてください。

「今の停滞は、自分が変えられることか、それとも組織(構造)の問題か」

この問いに向き合うことで、次にどう動くかが少しずつ見えてきます。答えが出なくてもいいです。考え始めたこと自体が、停滞から抜け出す最初の動きです。


まとめ

この記事では、キャリア停滞を感じたときに「静かな退職」を選ぶ前に考えてほしい3つの問いを整理しました。

  • 停滞の原因が自分にあるのか、組織にあるのかを切り分ける
  • 今の職場でやりたいことがまだあるかを確かめる
  • 転職など、別の選択肢を一度でも真剣に考えてみる

停滞を感じているとき、焦らなくていいです。ただ、自分の状況を整理することだけは、ぜひ続けてみてください。

次の記事では、望まぬ出向の辛さを乗り越えた体験から気づいた「キャリアの再設計」3ステップをお伝えします。


参考文献

学術論文

※1 Yang W-N, et al. “Revisiting the relationship between career plateau and job performance: A social-cognitive perspective.” Applied Psychology, 2025.
https://iaap-journals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/apps.70002

※2 Abdelaliem SM, El-Sayed AA. “Career plateau as a mediating factor between job satisfaction and promotion possibility among nurses.” Journal of Nursing Administration, 2022.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36166630/

※3 パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査」2025年
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/thinktank-column/202506120001/

※4 Chang P-C, Geng X, Cai Q. “The impact of career plateau on job performance: The roles of organizational justice and positive psychological capital.” Behavioral Sciences, 2024.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10886406/

※5 リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査:成長実感・キャリア展望」
https://www.works-i.com/column/teiten/detail032.html

※6 Polat Ş, et al. “The effect of nurses’ personal and professional characteristics and perceptions of hierarchical career plateau on their intention to leave.” PLoS One, 2025.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40168362/

※7 Kwon JE. “The relationship between career plateau and job burnout during the COVID-19 pandemic.” International Journal of Environmental Research and Public Health, 2022.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8834611/

調査・統計

※8 厚生労働省「労働者等のキャリア形成における課題に応じたキャリアコンサルティング技法の開発に関する調査・研究事業」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000198697.pdf

参考書籍

  • 渡辺三枝子『新版 キャリアの心理学 第2版』ナカニシヤ出版
  • 小口孝司監修『キャリア形成に活かす心理学』誠信書房

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