「なんとなく不安なんだけど、何が不安なのかわからない」
「漠然とした不安」は正体が掴めない分、ずっとそこにあり続けるような感覚があります。そんな宙ぶらりんな状態が、心理的な不安定さを余計に強めます。
でも、理由がはっきりしていれば対処もできます。
この記事では、漠然とした不安が消えない理由と、その正体に少しずつ近づくための3つの問いをお伝えします。不安をゼロにすることが目的ではありません。「正体がわかった」という感覚が、じわりと心を軽くしてくれると思います。
「漠然とした不安」とは何か?正体がわかりにくいのは当たり前
漠然とした不安とは、特定の出来事や理由がなくても続く、ぼんやりとした不安感のことです。
精神医学では「自由浮遊性不安(free-floating anxiety)」とも呼ばれ、対象のない不安として知られています(Mishra et al., 2023)。実は、これは珍しいことではありません。
なぜ正体がわかりにくいのでしょうか。
それは、不安が「まだ起きていないことへの想像」から生まれるからです。形のないものは言葉にしにくく、頭の中をぼんやりと漂い続けます。
「なぜ不安なのかわからない」のは、あなたが間違えているのではなく、不安という感情の性質そのものによるものです。
漠然とした不安が消えない3つの理由
具体的でないから「対処しようがない」と感じる
不安は、多くの場合「具体的な行動」によって和らぎます。
たとえば「明日の会議で失敗したら怖い」という不安であれば、準備することで少し落ち着けます。しかし「なんとなく将来が不安」という状態では、何をすれば良いのかわかりません。
行動できないと、不安だけが残ります。それが「消えない」という感覚につながります。
小さな心配が積み重なっている
仕事のこと、人間関係、お金、健康。
それぞれは小さな不安でも、複数が重なると頭の中で渦を巻き始めます。どれかひとつを解決しても、別の不安がまた浮かび上がってきます。
漠然とした不安の多くは、「小さな心配の集積」です。まとめて解決しようとすると、どこから手をつければいいかわからなくなります。
「考えないようにしよう」とするほど大きくなる
「不安なことを考えないようにしよう」と思ったことはありませんか。
心理学に「白クマ実験」という有名な研究があります。「白いクマのことを考えないでください」と言われると、かえって白いクマのことが頭に浮かびやすくなる、というものです(Wegner et al., 1987)。
不安も同じです。無理に抑え込もうとすると、意識の中でより大きな存在になっていきます。
「考えないようにしている」なら、それが不安を長引かせている原因のひとつかもしれません。
不安の正体を知るための3つの問い
不安を「消す」ことよりも、まず「知る」ことが先です。
正体がわかっただけで、漠然とした不安はかなり和らぎます。次の3つの問いを、ノートに書きながら試してみてください。
問い① 「何を失うことが、一番怖いのか?」
不安の根っこには、多くの場合「何かを失う恐れ」があります。
仕事、収入、人間関係、自分への信頼、将来の可能性。
「私は今、何を失いたくないのだろう?」と自分に問いかけてみてください。はっきりした答えが出なくても構いません。浮かんだ言葉をそのままノートに書き出すだけで、不安の輪郭が少しずつ見えてきます。
問い② 「いつから、この不安を感じているか?」
不安には「きっかけ」があることが多いです。
転職を意識し始めた頃から、上司が変わってから、ある会話の後から。
「いつから?」と遡ってみることで、「あの出来事がきっかけだったかもしれない」という気づきが生まれることがあります。原因がわかっても状況はすぐには変わりません。でも、「なぜ不安なのかわからない」という宙ぶらりんの感覚は、少し解消されます。
問い③ 「最悪の場合、何が起きると思っているか?」
認知行動療法の技法のひとつに、「最悪のシナリオを言葉にする」という方法があります(Bhattacharya et al., 2023)。
「仕事を失う」「誰にも必要とされなくなる」「将来の選択肢がなくなる」。
言葉にすると怖く感じるかもしれません。でも、漠然とした恐れを具体的にすると、対処しやすくなります。「最悪」が見えれば、「それを防ぐためにできること」も見えてくるからです。
自分の思考のクセが不安を大きくしている場合もあります。思考の歪みが不安を生み出す|自分のクセに気づくだけで心が軽くなる理由も参考にしてみてください。
今日からできる小さな一歩
3つの問いを「全部やろう」としなくて大丈夫です。
今日は、ノートを1枚開いて「私が一番失いたくないものは何だろう?」と書くだけで十分です。答えが出なくても、問いを立てたこと自体に意味があるのです。
体を動かすことで不安が和らぐ仕組みについては、運動で不安を減らすを参考にしてみてください。不安への向き合い方をもうひとつ手に入れることができます。
まとめ
漠然とした不安が消えないのは、あなたが弱いからではありません。不安という感情の性質と、思考のパターンが絡み合っているからです。
今回お伝えしたことをまとめます。
- 漠然とした不安は「対象のない不安」で、正体がわかりにくいのは自然なこと
- 不安が消えないのは「具体化できない」「抑え込もうとする」ことが原因のひとつ
- 「失いたいものは何か」「いつからか」「最悪は何か」の3つの問いで正体に近づける
不安を完全になくすことはできないかもしれません。でも、正体を知ることで「ただそこにある不安」から「扱える不安」へと変わっていきます。
あなたのペースで、少しずつ整理していきましょう。
参考文献
- Mishra, A., et al. (2023). A Comprehensive Review of the Generalized Anxiety Disorder.
全般性不安障害の症状・診断・病態生理・治療を包括的にレビューし、自由浮遊性不安の概念を含む最新の知見を整理した。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10612137/ - Wegner, D. M., Schneider, D. J., Carter, S. R., & White, T. L. (1987). Paradoxical effects of thought suppression. Journal of Personality and Social Psychology, 53(1), 5–13.
思考を抑制しようとすると、かえってその思考が増幅する「皮肉なリバウンド効果」を実験的に示した。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3612492/ - Bhattacharya, S., Goicoechea, C., Heshmati, S., Carpenter, J. K., & Hofmann, S. G. (2023). Efficacy of Cognitive Behavioral Therapy for Anxiety-Related Disorders: A Meta-Analysis of Recent Literature. Current Psychiatry Reports, 25(1), 19–30.
2017年以降のRCTのメタ分析で、CBTが不安関連障害に対してプラセボを上回る有意な効果を示すことを確認した。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9834105/


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