「面接は相手を調べる場でもある」。そう言われても、いざ面接室に座ると、何を見ればいいのかわからない。気づけばまた、自分がどう見られているかばかり気にしている。
転職面接はテストではないで立ち位置を、なぜ面接で「ジャッジされる側」だと感じてしまうのかで萎縮のしくみを整理してきました。今回は、その立ち位置から実際に何を観察すればよいかを、3つの軸で具体化します。
見るべきは、入ってからでは取り返しがつかない情報です。給与や仕事内容は入社前に書面で確認できます。けれど、人の空気・職場の構造・自分との相性は、対面の場でしか確かめられません。
前提:直感は手がかりになる。ただし過信はしない
「この職場、なんとなく合いそう」「面接官の感じがよかった」。短い時間でも、私たちは相手の印象をつかみます。
ただし、その直感をどこまで信じてよいかは、慎重になったほうがよさそうです。エイムズらの研究では、短い接触から受ける印象について、人が抱く自信の強さと、判断の実際の正確さは、必ずしも一致しないことが示されています(Ames et al., 2010)※1。「絶対この会社だ」という強い確信も、「なんとなく嫌」という漠然とした感覚も、当たっているとは限らないのです。
だから、直感は出発点として使い、結論にはしない。面接後に「なんとなく」で終わらせず、何を見てそう感じたのかをメモに残す。観察を感覚から記録へ変えることが、調査の第一歩です。
観察軸1:人 ― 安心して発言できる空気があるか
職場の質を最も早く映すのは、その場の「空気」です。とくに見たいのは、心理的安全性、つまり率直に意見や疑問を口にしても罰せられないという感覚が、その組織にありそうかどうかです。
石井遼介氏は、心理的安全性の高いチームでは、メンバーが安心して質問・指摘・失敗の共有ができ、それが組織の力につながると整理しています※A。面接の場でも、その片鱗は見えます。あなたの質問を面接官が遮らずに聞くか。答えにくい問いに、ごまかさず誠実に向き合うか。複数人いるとき、上下関係の空気はどうか。
逆に、質問を軽くあしらう、上の人が話すと下の人が黙る、ネガティブな質問に不機嫌になる。こうした反応は、入社後のあなたが置かれる空気の予告編かもしれません。心理的安全性が欠けた職場で何が起きるかは、心理的安全性がない職場にいるサインで詳しく扱っています。
観察軸2:環境 ― 消耗を生む構造がないか
雰囲気だけでなく、働く環境の構造そのものにも、見るべき的があります。何が人を消耗させるかは、研究によってかなり具体的にわかっています。
アロンソンらが多数の研究を統合したレビューでは、裁量(自分で決められる余地)の低さ、支援の乏しさ、報酬の低さ、過大な要求、不公正、雇用の不安定さが、燃え尽きのリスクを高めることが示されています(Aronsson et al., 2017)※2。これは、面接で確かめるべき項目のチェックリストにそのまま使えます。
たとえば、「この仕事はどこまで自分で判断できますか」「困ったとき、誰に相談できますか」「評価はどう決まりますか」。こうした質問への答え方で、裁量・支援・公正さの実態が透けて見えます。答えがあいまいだったり、はぐらかされたりするなら、それ自体が一つの情報です。
観察軸3:自分との適合 ― 良し悪しではなく「合うか」
最後の軸は、相手の優劣ではなく、自分と合うかどうかです。どれだけ良い会社でも、自分の動機や価値観と噛み合わなければ、消耗します。
ブランドステッターらの研究では、自分の動機と仕事内容が一致していない状態が、燃え尽きや身体症状の増加と関連することが示されています(Brandstätter et al., 2016)※3。だから観察の最後は、相手に向けた目を自分に戻す作業になります。この職場の評価のされ方は、自分が伸びる形か。求められる働き方は、自分が大事にしたいものと両立するか。鈴木祐氏も、適職とは思い込みではなく自分との適合で選ぶものだと整理しています※B。
良い会社かどうかではなく、自分に合う会社かどうか。この問いが、ミスマッチを防ぐ最後の関門です。
見るのは「答えの内容」ではなく「答え方」
3つの軸に共通するコツがあります。それは、相手の言葉の内容そのものより、答え方を見ることです。
どの会社も「風通しがいい」「成長できる」と言います。建前は、ほとんど差が出ません。差が出るのは、その建前を語るときの態度です。具体的なエピソードで答えるか、抽象的な言葉で逃げるか。答えにくい質問に誠実に向き合うか、はぐらかすか。
見るのは、答えの内容じゃなくて、答え方。建前と本音のズレは、言葉ではなく、ふるまいに表れます。
今日からできる小さな一歩
- 面接前に「3つの軸」で質問を1つずつ用意する: 人(相談できる相手はいるか)・環境(裁量や評価はどうか)・適合(自分の大事にしたいことと合うか)。3問あれば、調査の骨格ができます
- 面接後、感じた印象を「何を見てそう思ったか」とセットでメモする: 「なんとなく良かった」で終わらせず、根拠を書き出します。直感を記録に変える練習です
- 「答えにくい質問」を1つ混ぜてみる: ごまかさず答えるかどうかに、その組織の誠実さが表れます。反応そのものが、貴重なデータになります
まとめ
面接で相手を調査するとは、人・環境・自分との適合という3つの軸で観察することです。安心して発言できる空気があるか。消耗を生む構造がないか。そして、自分と合うか。
どれも、入ってからでは取り返しがつかない情報です。だからこそ、直感を結論にせず記録に変え、答えの内容ではなく答え方を見る。それが、入社後の自分を守る調査になります。
記事#3では、この調査をもっとも能動的に行える場面、つまり逆質問を「調査」として使う方法をまとめます。
なお、職場選びの判断はあなたの状況によって異なります。この記事は特定の選択を勧めるものではなく、観察の視点を整理するものです。
このシリーズの記事一覧
転職面接を「相互に見極める場」として捉え直し、入社後のミスマッチを防ぐためのシリーズです。
- 転職面接はテストではない|「評価される側」という思い込みが消耗を生む
- 記事#1:なぜ面接で「ジャッジされる側」だと感じてしまうのか|萎縮を生む3つの心理
- 本記事:面接で相手を調査するという視点|何を見れば職場の本当が見えるか
- 記事#3:逆質問は「質問」ではなく「調査」|聞き方で職場の本音が見える
参考文献
※1 Ames DR, Kammrath LK, Suppes A, Bolger N. “Not so fast: the (not-quite-complete) dissociation between accuracy and confidence in thin-slice impressions.” Pers Soc Psychol Bull. 2010;36(2):264-277. PMID: 20032271
短い接触から受ける印象について、抱く自信の強さと判断の実際の正確さが必ずしも一致しないことを示した研究。面接での直感を結論にせず記録として扱うべきことの根拠となっている。
※2 Aronsson G, Theorell T, Grape T, et al. “A systematic review including meta-analysis of work environment and burnout symptoms.” BMC Public Health. 2017;17(1):264. PMID: 28302088
裁量の低さ・支援の乏しさ・報酬の低さ・過大な要求・不公正・雇用不安が燃え尽きリスクを高めることを多数の研究の統合で示したレビュー。面接で確かめるべき職場環境の項目の根拠となっている。
※3 Brandstätter V, Job V, Schulze B. “Motivational Incongruence and Well-Being at the Workplace: Person-Job Fit, Job Burnout, and Physical Symptoms.” Front Psychol. 2016;7:1153. PMID: 27570513
自分の動機と仕事内容の不一致が燃え尽きや身体症状の増加と関連することを示した研究。良い会社かどうかではなく自分に合うかを観察すべきことの根拠となっている。
※A 石井遼介著『心理的安全性のつくりかた』日本能率協会マネジメントセンター、2020年。ISBN:9784820728245
率直に意見や疑問を口にできる心理的安全性が組織の力につながることを整理した実務書。面接で職場の空気を観察する際の着眼点の参考としている。
※B 鈴木祐著『科学的な適職 4021の研究データが導き出す』クロスメディア・パブリッシング、2019年。ISBN:9784295403746
多数の研究データをもとに、思い込みではなく自分との適合で職を選ぶ重要性を整理した実用書。観察の最後に視点を自分へ戻すという本記事の考え方の参考としている。


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