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「聞くべき反対」と「流していい反対」を見分ける

「聞くべき反対」と「流していい反対」を見分ける 職場の話

前回の記事「何をやっても反対意見は出るもの|なぜ全員の賛成は存在しないのか」では、反対が出るのは避けられないこと、全員の賛成は存在しないことをお伝えしました。

そう聞くと、こう思う人もいるかもしれません。「では、反対は全部無視すればいいのか」と。けれど、それも違います。反対の中には、耳を傾ける価値のあるものと、受け流していいものが混ざっています。全部真に受けても消耗するし、全部無視すれば大事な指摘を見落とします。

この記事のテーマは、その二つを見分けることです。「聞くべき反対」と「流していい反対」。この線を引けるようになると、反対に振り回されず、必要なものだけを受け取れるようになります。


反対は、一つ残らず真に受けなくていい

まず知っておきたいのは、私たちは反対や批判を、実際以上に大きく受け取ってしまう、ということです。

研究では、人の脳は、肯定的な情報よりも否定的な情報を重く処理することが示されています(※1)。同じ強さでも、賛成の声より反対の声のほうが、心に強く残り、大きく響く。だから、十人のうち九人が賛成でも、一人の反対のほうが頭から離れない、ということが起こります。

これは、あなたが打たれ弱いからではなく、人に共通する脳の働きです。だからこそ、反対を受け取るときは、意識的に重みづけを調整する必要があります。すべての反対を額面どおり受け取ると、実態より重く見積もってしまうのです。まずは、「一つ残らず真に受けなくていい」と、自分に許可を出すことから始めましょう。


「聞くべき反対」の見分け方

では、耳を傾ける価値のある反対とは、どんなものでしょうか。いくつかの目安があります。

一つ目は、具体的で建設的なこと。「なんとなくダメ」ではなく、「ここがこう問題で、こうしたらどうか」と、中身と代案を伴う反対は、聞く価値があります。二つ目は、その人が当事者や経験者であること。実際にそのことに関わっている人、経験してきた人の反対には、見落としを補ってくれる情報が含まれていることが多いです。三つ目は、あなたの目的を一緒に見てくれていること。あなたが何を目指しているかを踏まえたうえでの反対なら、それは敵ではなく、同じ方向を向いた助言かもしれません。

大切なのは、反対の内容を、感情を交えずに一度吟味することです。誰の意見であっても鵜呑みにせず、自分の頭で「この指摘は当たっているか」と確かめてみる(※5)。その姿勢が、聞くべき反対を、きちんと拾い上げる力になります。


「流していい反対」の見分け方

一方で、受け流していい反対にも、特徴があります。

具体性がなく、ただ「反対」「無理」とだけ言う。代案も理由もなく、感情的にぶつけてくる。そのことに関わってもいない、責任も負わない立場から、外野として口を出す。あなたの目的やあなた自身を無視して、人格や存在そのものを否定してくる。こうした反対は、あなたの選択の質を高める材料にはなりません。

特に注意したいのは、単なる現状維持のための反対です。「今のままでいい」「前例がない」だけを理由にした反対は、前回見たとおり、変化への不安から出ていることが多く、あなたの案の中身を評価したものではありません。

こうした反対に、いちいち律儀に向き合う必要はありません。扱いにくい相手や理不尽な批判からは、まともに受け止めすぎず、上手に受け流して自分を守ることも大切です(※4)。すべての声に応えようとしないことが、消耗を防ぎます。


反対は、あなたへの評価ではなく、一つの視点

見分けるうえで、根っこに置いておきたい前提があります。それは、反対とは「あなたへの評価」ではなく、「一つの視点」にすぎない、ということです。

前回も触れたとおり、人は自分の見方を客観的に正しいと感じやすいものです(※2)。だから反対する人も、悪気なく「自分こそ正しい」という前提で語っています。けれど、それはあくまでその人の一視点であって、あなたの選択の絶対的な判定ではありません。

反対を受けたとき、それを「自分はダメだ」という自己否定に結びつけないことが大切です。つらいときに自分を責めるのではなく、自分にやさしく接する姿勢が、心の安定を保つことがわかっています(※3)。反対は、内容を吟味する対象であって、あなたの価値を測る物差しではない。この切り分けができると、聞くべき反対も、落ち着いて受け取れるようになります。慢性的に否定や批判をぶつけてくる相手への距離の取り方は「否定と批判が癖になっている人|慢性的な批判者との心理的距離の設計」も参考になります。


今日からできる小さな一歩

今日試してほしいのは、最近受けた反対を一つ思い出して、二つの問いに当てはめてみることです。

一つ目、「その反対は、具体的で、中身のある指摘だっただろうか」。二つ目、「その人は、当事者や経験者として、あなたの目的も踏まえて言ってくれただろうか」。

両方に「はい」なら、それは聞く価値のある反対かもしれません。片方でも「いいえ」なら、少し距離を置いて眺めていい反対です。この仕分けを一度してみるだけで、頭の中で大きく膨らんでいた反対が、扱えるサイズに縮んでいきます。すべてに応える必要はない。そう思えることが、次の一歩を軽くします。


まとめ

反対は、全部真に受ける必要も、全部無視する必要もありません。人の脳は否定的な情報を重く受け取るので、意識して仕分けることが大切です。

聞くべき反対は、具体的で建設的、当事者や経験者からの、あなたの目的を踏まえた声です。流していい反対は、具体性がなく、感情的で、外野からの、あなた自身を否定するような声です。とりわけ、単なる現状維持のための反対は、あなたの案の中身を評価したものではありません。

そして忘れないでほしいのは、反対は一つの視点であって、あなたへの評価ではないということです。内容は吟味し、自分の価値とは切り離す。次の記事では最終回として、反対がある中で、それでも自分の選択に動き出す方法を見ていきます。


参考文献

※1: Ito TA, Larsen JT, Smith NK, Cacioppo JT. Negative information weighs more heavily on the brain: the negativity bias in evaluative categorizations. J Pers Soc Psychol. 1998. PMID: 9825526
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9825526/
人の脳が、同じ強さでも肯定的な情報より否定的な情報を重く処理することを、脳波の測定から示した研究。反対や批判が過大に感じられる背景。

※2: Pronin E, Gilovich T, Ross L. Objectivity in the eye of the beholder: divergent perceptions of bias in self versus others. Psychol Rev. 2004. PMID: 15250784
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15250784/
人は自分のものの見方を客観的で正しいと感じやすく、反対もまた相手の一視点にすぎないことを示唆する研究。

※3: MacBeth A, Gumley A. Exploring compassion: a meta-analysis of the association between self-compassion and psychopathology. Clin Psychol Rev. 2012. PMID: 22796446
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22796446/
自分に優しく接するセルフコンパッションが高い人ほど、不安や抑うつが少ないことを多数の研究から示したメタ分析。

※4: 井上智介『職場のめんどくさい人から自分を守る心理学』日本能率協会マネジメントセンター, 2021, ISBN: 9784820729723
理不尽な批判や扱いにくい相手に、まともに受け止めすぎず、上手に受け流して自分を守るための考え方を解説した書籍。

※5: ちきりん『自分のアタマで考えよう 知識にだまされない思考の技術』ダイヤモンド社, 2011, ISBN: 9784478017036
他人の意見や情報を鵜呑みにせず、自分の頭で吟味して確かめるための思考の技術を解説した書籍。

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