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反対があっても、動く|全会一致を待たない意思決定

反対があっても、動く|全会一致を待たない意思決定 ストレスの話

「何をやっても反対は出る」というテーマで、ここまで見てきました。反対が出るのは避けられないこと、そして反対には聞くべきものと流していいものがあること。最終回となるこの記事では、いよいよ本題です。反対がある中で、それでも自分の選択に動き出すには、どうすればいいのか。

反対の存在を受け入れ、聞くべきものは聞いた。それでもなお、心のどこかで「反対する人がいるうちは、動けない」と足踏みしてしまう。その気持ちは、よくわかります。けれど、反対がゼロになるのを待っていると、私たちはいつまでも動けません。この記事では、全会一致を待たずに、自分の一歩を踏み出すための考え方を見ていきます。


「全員が納得してから」では、いつまでも動けない

まず受け入れたいのは、「全員が納得してから動こう」という条件は、実際には満たされることがほとんどない、ということです。

前回までに見たとおり、人はそれぞれ違う見方をし、変化に不安を感じ、本心からは一致しません。だから、全員が心から賛成する瞬間を待つのは、来ないバスを待ち続けるようなものです。その間、あなたの時間とエネルギーは、静かに消耗していきます。

「反対がなくなったら動く」ではなく、「反対はあるものとして、それでも動く」。この前提の切り替えが、足踏みから抜け出す最初の一歩です。全員の納得は、行動の条件ではありません。


決める軸を、「賛否の数」から「自分の目的」に移す

では、何を基準に動けばいいのでしょうか。鍵は、判断の軸を「賛成が多いか反対が多いか」から、「自分は何のためにこれをやるのか」へと移すことです。

反対の数を基準にすると、あなたの選択は、いつも他人の反応次第になります。けれど、あなたがどう生きるか、何をするかは、本来あなたの課題です。それをどう評価するかは、相手の課題です。この二つを切り分けられると、賛否の数に振り回されずに、自分の目的に立って決められるようになります(※4)。

もちろん、これは「他人の意見を全部無視する」ことではありません。聞くべき反対は取り入れる。そのうえで、最終的に決める軸は、多数決ではなく、自分の目的に置く。「みんながどう思うか」ではなく「自分は何を目指すのか」。この主語の移し替えが、動くための足場になります。


反対の中で動くのは、折れることではなく、選ぶこと

反対を押し切って動くことに、罪悪感を覚える人もいます。「わがままではないか」「協調性がないのではないか」と。けれど、反対の中で自分の選択を進めることは、相手を打ち負かすことでも、折れることでもありません。それは、自分で選ぶ、ということです。

自分で選び、自分で動かしているという感覚は、それ自体が人の心の安定を支えることがわかっています(※1)。そして、自分の意思で行動しているという自律性は、意欲や充実感の土台になります(※2)。反対に流されて選択をあきらめると、この「自分で選んでいる」感覚が失われ、あとに残るのは、他人に人生を預けたような空虚さです。

反対する人の声に配慮しつつ、それでも最後は自分で決める。その姿勢は、身勝手さとは違います。自分の人生の主導権を、自分の手に握っておくということなのです。


小さく動いて、実績で応える

とはいえ、いきなり大きく踏み出す必要はありません。反対のある中では、小さく動いて、結果で示していくのが現実的です。

言葉で反論を続けても、見え方の違う相手を説得しきるのは難しいものです。それよりも、小さな一歩を実際に踏み出し、少しずつ形にしていく。人は、自分の行動が小さな成果につながる経験を重ねることで、「自分にはできる」という感覚を育てていきます(※3)。その積み重ねが、あなた自身の自信になり、ときには、反対していた人の見方を変えることもあります。

大切なのは、その場の空気やみんなの顔色に合わせて、動くこと自体をやめてしまわないことです(※5)。全員を納得させてから動くのではなく、動きながら、結果で少しずつ応えていく。反対は、あなたが止まる理由ではなく、丁寧に進むための情報にすぎません。行動を起こした先で返ってくる反応との向き合い方は返ってくる反応は、相手のもの|コントロールできるのは自分のアクションまでも参考になります。


今日からできる小さな一歩

今日試してほしいのは、反対があって足踏みしている物事について、「反対がゼロになったら」という条件を、いったん外してみることです。

そのうえで、こう自分に問いかけてみてください。「自分は、何のためにこれをやりたいのか」。その目的が、自分にとって大切だと感じられるなら、反対がある中でも踏み出せる、いちばん小さな一歩は何かを、一つだけ決めてみます。

資料を一枚作る、一人に相談する、五分だけ始める。なんでも構いません。全員の賛成を待つのをやめ、自分の目的に立って、小さく動く。その一歩が、止まっていた足を、また前へ進めてくれます。


まとめ

反対がある中で動くために大切なのは、「全員が納得してから」という条件を手放すことです。全員の賛成は来ないのですから、それを待てば、いつまでも動けません。

判断の軸を、賛否の数から、自分の目的へと移す。反対に流されずに自分で選ぶことは、折れることでも身勝手でもなく、自分の人生の主導権を握ることです。そして、言葉で反論し続けるより、小さく動いて結果で応えていく。反対は、止まる理由ではなく、進むための情報です。

このシリーズでは、反対がどうしても出る理由から、聞くべき反対と流していい反対の見分け方、そして反対の中で動く方法までを見てきました。何をやっても、たいてい反対は出ます。それでも、あなたは自分の目的に立って、一歩を選ぶことができます。全員の賛成という幻を追うのをやめたとき、あなたの足は、ようやく自由に動きはじめます。


参考文献

※1: Leotti LA, Iyengar SS, Ochsner KN. Born to choose: the origins and value of the need for control. Trends Cogn Sci. 2010. PMID: 20817592
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20817592/
自分で選び、自分で行動しているという感覚が、結果の良し悪しとは別に人の心の安定を支えることを論じた論文。

※2: Ryan RM, Deci EL. Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. Am Psychol. 2000. PMID: 11392867
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11392867/
自分の意思で行動しているという自律性の感覚が、人の意欲と充実感を支える基本的な要素であることを示した論文。

※3: Bandura A. Self-efficacy: toward a unifying theory of behavioral change. Psychol Rev. 1977. PMID: 847061
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/847061/
実際に行動して小さな成果を積み重ねた経験が、「自分にはできる」という自己効力感を育てる最も強い土台になることを示した理論。

※4: 岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』ダイヤモンド社, 2013, ISBN: 9784478025819
自分の課題と他者の課題を切り分け、他人の評価に振り回されず、自分の目的に立って選ぶ考え方を示した書籍。

※5: 鴻上尚史『「空気」を読んでも従わない 生き苦しさからラクになる』岩波書店, 2019, ISBN: 9784005008933
その場の空気やみんなの顔色に合わせて自分の選択をあきらめず、自分で決めて動くことの大切さを示した書籍。

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