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自分だけ浮いている職場の居場所|「合わない」を見極める

自分だけ浮いている職場の居場所|「合わない」を見極める ストレスの話

「職場で浮いている」というテーマで記事を重ねてきました。浮いている感覚の正体、その原因、浮いたまま自分を保つ方法、そして前回は、「職場で自分が浮いているのは「文化」のせい? それとも「仕事」のせい?|ズレの原因を見分ける」で、ズレの種類を切り分けました。

このシリーズの最後にお伝えしたいのが、いちばん重い問いです。それは、この職場に「とどまるか、出るか」。合わないとわかったとき、私たちはどう見極めればいいのでしょうか。

先に大切なことをお伝えします。この問いに、急いで答えを出す必要はありません。とどまるも、出るも、どちらかが正解というわけではないからです。この記事では、結論を出すためというより、冷静に見極めるための視点を整理していきます。


「合わない」のすべてが、辞める理由になるわけではない

まず確かめたいのは、その「合わない」が一時的なものか、それとも慢性的なものか、という点です。

新しい部署に移ったばかり、メンバーが入れ替わった直後、忙しさのピークのただ中。そういう時期は、誰でも一時的に浮いたように感じることがあります。けれど、それは環境が落ち着けば薄れていく類いの違和感かもしれません。

一方で、何か月、あるいは何年と、状況が変わっても消えないズレもあります。見極めたいのは、後者のほうです。「今だけのこと」と「ずっと続いていること」を分けるために、いつ頃からその感覚があるのかを、一度振り返ってみてください。一時的なものなら、結論を急がず、もう少し様子を見るという選択も十分にあります。


変えられるズレか、変えられないズレか

慢性的なズレだとわかったら、次に考えたいのが、それは「変えられるズレ」か「変えられないズレ」かです。ここで効いてくるのが、前回の診断です。

業務内容とのズレが主な原因なら、それは比較的、変えられる余地があります。役割の調整を相談する、部署異動を希望する、得意を活かせる仕事に少しずつ寄せていく。同じ会社の中でも打てる手があります。社内で動くか外に出るかの比較は、「転属と転職どちらを選ぶべきか?後悔しない判断基準を分かりやすく整理」が参考になります。

一方、組織文化とのズレが主な原因なら、変えるのは難しくなります。価値観や空気は個人の努力では動かしにくく、部署を移っても多くの場合そのまま残るからです。実際、研究でも、職場との適合の低さは「ここを離れたい」という気持ちと結びつくことが示されています(※1)。文化のズレが深いとき、出るという選択肢が現実味を帯びてくるのは、自然なことです。

「変えられるなら、変える工夫をしてみる。変えられないなら、出ることも視野に入れる」。この線引きが、判断の軸になります。


とどまり続けることにも、コストがある

「出る」にはリスクがある。これはよく語られます。けれど、見落とされがちなのが、「合わない場所にとどまり続けること」にも、コストがあるという事実です。

価値観の合わない環境や、自分に合わない仕事の中に長くいると、人は少しずつすり減っていきます。研究では、職場との慢性的なミスマッチが、消耗や燃え尽きにつながることが示されています(※2)。「とどまる=安全」「出る=危険」と単純には言えません。とどまることにも、心の消耗という見えにくい代償があるのです。

だからこそ、両方を天秤にかけることが大切です。出ることのリスクだけでなく、このまま合わない場所にい続けたとき、数年後の自分はどうなっているか。その両面を並べて見ることで、判断はより現実に近づきます。


出るか残るかを、消耗の底で決めない

ただし、一つだけ気をつけたいことがあります。それは、いちばん消耗している時期に、重い決断をしないことです。

強いストレスの下では、人の判断は短期的で衝動的な方向に偏りやすくなることがわかっています(※3)。「もう無理、今すぐ辞める」も、「自分が我慢すればいい、ずっとここにいる」も、消耗の底で出した結論は、あとから振り返ると極端になりがちです。

見極めは、心が少し落ち着いてからで構いません。今がつらさのピークなら、まずは休むこと、距離を取ることを先にして、判断はそのあとに回す。それ自体が、賢い進め方です。「辞めたい」という気持ちが甘えなのか心の危険信号なのかを見分ける視点は、「辞めたい」は甘えではない|心が出している危険信号の見分け方」も参考にしてください。

そして最後に。とどまるにせよ、出るにせよ、その決断を「自分で選んだ」と思えることが、何より大切です。誰かに流されてでも、追い詰められてでもなく、自分の意思で選ぶ。その感覚が、選んだあとの毎日を支えてくれます。


今日からできる小さな一歩

今日できるのは、紙を一枚用意して、二つの問いに書き出してみることです。

一つ目は、「このズレは、変えられるものか、変えられないものか」。前回の診断(文化か業務か)を思い出しながら、今の自分の状況を当てはめてみてください。二つ目は、「このまま2年いたら、自分はどうなっていそうか」。とどまるコストを、具体的に想像してみるのです。

答えがすぐに出なくても構いません。この二つを書き出すだけで、「とどまるか出るか」という大きすぎる問いが、考えられるサイズに分解されていきます。判断は、そのあとでゆっくり育てていけば大丈夫です。

大切なのは、追い詰められて反射的に決めるのではなく、自分の手で材料を並べ、自分のペースで選ぶこと。その一歩が、どちらを選んだとしても、後悔の少ない決断につながります。


まとめ

合わない職場にとどまるか出るかは、このシリーズでいちばん重い問いです。見極めの順序は、まず「一時的か慢性的か」、次に「変えられるズレか、変えられないズレか」。業務のズレなら社内で動ける余地があり、文化のズレなら出る選択肢が現実味を帯びます。

そして、出ることのリスクだけでなく、合わない場所にとどまり続けるコストも、両面で見ること。判断は、消耗の底ではなく、心が落ち着いてから。最後は、誰かに流されてではなく、自分の意思で選ぶこと。

ここまで、「浮いている」感覚を、正体・原因・対処・診断・判断と見てきました。浮いているのは、あなたが劣っているからでも嫌われているからでもなく、その場との適合度のズレでした。ズレは責める対象ではなく、扱える情報です。自分を責めるのをやめ、ズレを見極め、自分の足場をつくり、自分の意思で次を選ぶ。そのすべてが、浮いている日々から前へ進むための、確かな力になります。


参考文献

※1: Xiao Y et al. Person-environment fit and medical professionals’ job satisfaction, turnover intention, and professional efficacy: A cross-sectional study in Shanghai. PLoS One. 2021. PMID: 33905430
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33905430/
職場との適合の低さが、仕事の満足度を下げ、「ここを離れたい」という離職意向と結びつくことを示した研究。

※2: Maslach C, Leiter MP. Understanding the burnout experience: recent research and its implications for psychiatry. World Psychiatry. 2016. PMID: 27265691
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27265691/
価値観の不一致や仕事のミスマッチが長く続くことが、消耗や燃え尽きにつながることを整理した論文。

※3: Starcke K, Brand M. Decision making under stress: a selective review. Neurosci Biobehav Rev. 2012. PMID: 22342781
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22342781/
強いストレス下では意思決定が短期的・衝動的に偏りやすくなることを、多数の研究から整理したレビュー論文。

※4: 北野唯我『転職の思考法』ダイヤモンド社, 2018, ISBN: 9784478105559
仕事を「逃げ」ではなく環境を選び直す手段として捉え、どんな基準で組織や働く場を選ぶかを実践的に示した書籍。

※5: 鈴木祐『科学的な適職』クロスメディア・パブリッシング, 2019, ISBN: 9784295403746
仕事選びで陥りがちな誤りを科学的知見から整理し、自分に合う仕事の中身や条件をどう見極めるかを解説した書籍。

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