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なぜ自分ばかり責任と負担が集まるのか|頼みやすい人に流れが集中する仕組み

なぜ自分ばかり責任と負担が集まるのか|頼みやすい人に流れが集中する仕組み ストレスの話

「なぜか、面倒な役回りはいつも自分に回ってくる」

雑用も責任も、気づけば自分のところへ。しかも何かあれば、責められるのも自分。前回の記事では「自分ばかり」と感じる心の仕組みを見ましたが、今回は実際に負担が偏るときの構造を整理します。

引き受ける人に、流れは集まる

負担が偏るのは、あなたが狙われているからではなく、断らない人のところへ流れが集まるからです。

自分のことを後回しにして他者に尽くしすぎる傾向は、心理学で無条件の他者志向と呼ばれます。この傾向が強い人は、自己犠牲と過剰な関与の末に消耗し、心理的な苦痛を抱えやすいことが示されています(※1)。頼みやすい人が引き受け、こなすからまた頼まれる。この繰り返しで、負担はひとりに集中していきます。優しさや有能さが、皮肉にも流れを呼び込むのです。

「断れる」という前提が崩れている

なぜ引き受けてしまうのか。鍵は、断ることの社会的コストを重く見すぎる点にあります。

人は「ノー」と言うと相手を失望させ、角が立つと感じ、その負担を避けて引き受けます。一方で頼む側は、「嫌なら断るだろう」と軽く考えていることが多い。実際、頼みごとに応じてもらえる確率を、頼む側は実際より低く見積もることが研究で示されています(※2)。つまり、あなたが必死に背負っているほど、相手は「断ってもよかったのに」と思っている。両者のあいだに、大きなズレがあるのです。

責められるのも、引き受けた人

引き受ける人に集まるのは、仕事だけではありません。責任もです。

担当したぶん、何かあれば結果の責めも向かいます。そこに個人化(出来事を自分のせいに結びつける思考のクセ)が重なると、「やはり自分が悪い」と必要以上に抱え込みます。負担と非難が同じ人に積み上がる。これが「なぜ自分ばかり責められるのか」の正体です。

ここで切り分けたいのは、引き受けた責任と、結果の責めは別だということです。任されたことと、起きたことすべての責任を負うことは、同じではありません。

今日からできる小さな一歩

次に何かを頼まれたら、その場で「はい」と即答せず、「少し考えます」と一拍置いてみてください。

断る必要はありません。間を取るだけで、自動的に引き受ける流れが一度止まります。その一拍が、負担の集中をゆるめる最初のすき間になります。

まとめ

責任と負担が自分に集まるのは、あなたが狙われているからではなく、引き受ける人に流れが集中する構造があるからです。断りにくさが引き受けを生み、引き受けが次の依頼と非難を呼ぶ。

優しさや有能さは、欠点ではありません。ただ、その流れに一拍のすき間を作ることが、偏りをゆるめていきます。

このシリーズの記事

あわせて、頼みを断れない心理を掘り下げた引き受け癖がある人の断れない心理|「すべき思考」と読心術、距離の設計を体系的に扱った境界線(バウンダリー)がないと消耗し続ける|苦手な人との距離を設計するための全体像もご覧ください。

参考文献

※1 Fritz HL, Helgeson VS. Distinctions of unmitigated communion from communion: self-neglect and overinvolvement with others. J Pers Soc Psychol. 1998 Jul;75(1):121-40. PMID: 9686454 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9686454/
 → 自分を後回しにして他者に尽くしすぎる「無条件の他者志向」が、自己軽視・過剰な関与・心理的苦痛につながることを4つの研究から示した論文。

※2 Flynn FJ, Bohns VK. If you need help, just ask: Underestimating compliance with direct requests for help. Journal of Personality and Social Psychology. 2008;95(1):128-143.
 → 人は頼みごとに応じてもらえる確率を実際より低く見積もり、頼まれた側が「ノー」と言う社会的コストの重さを軽視しがちであることを示した研究。

※A 平木典子著「アサーション入門 自分も相手も大切にする自己表現法」講談社現代新書、2012年、ISBN:9784062881432
 → 自分の気持ちも相手の立場も尊重しながら、責めず卑屈にもならずに「ノー」を伝えるアサーションの考え方と方法を解説した入門書。

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