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「OK/OK」な関係に近づくために|パターンを知った先にできること

「OK/OK」な関係に近づくために|パターンを知った先にできること 内向型の話

「あの人とはいつもこうなる」と思いながら、また同じ展開になっていた。

前回の記事で、ストロークの欠乏と心理的ゲームの仕組みを読んだ方の中に、こんな感覚を持った人がいるかもしれません。

パターンに名前がついた。繰り返す理由もわかった。でも、わかっただけでは何も変わっていない気がする。

それは当然の感覚です。「理解」と「変化」は別のことだからです。

この記事では、パターンを知った先に、実際に何ができるかを整理します。「OK/OK」な関係に向けて動くための、小さくて具体的な実践です。


「気づいた」ことは、すでに変化の始まりです

交流分析の研究では、TA(交流分析)のトレーニングが自己肯定感の向上に有意な効果をもたらすことが、臨床試験によって示されています(※1)。そして感情知性(相手の感情を理解し、自分の感情を調整する力)においても、同様の改善が確認されています(※2)。

これらの研究に共通しているのは、「パターンに気づくプロセスそのものが変化を生む」という点です。

「またやってしまった」という後悔ではなく、「あ、今自分はこのパターンにいるな」という観察。その一瞬の気づきが積み重なると、反射的な反応に少しずつ「間」が生まれます。決意ではなく、気づきの積み重ねが変化を起こします。


「OK/OK」な関係とはどういう状態か

ここで一度、「OK/OK」な関係のイメージを確認しておきます。

「争いがない関係」だと思っている人もいるかもしれません。でも、それは違います。

シリーズ第1回で整理した通り、「OK/OK」とは「自分にも相手にも価値がある」という感覚から動いている状態です。意見が違っても、どちらかが折れなくても、お互いの存在を認めたまま話し合える。それが「OK/OK」な関係の実態です。

「仲良くしなければならない」でも「相手に合わせなければならない」でもありません。「争っても関係が終わらない」という感覚が、「OK/OK」の核心にあります。

トーマス・ハリスは「OK/OK」の状態について、「勝ち負けの外側に立つことができる姿勢」と表現しています(※6)。正しさを競うのではなく、お互いの存在ごと受け取る。そこに向かうことが、目指す方向です。


パターン別の「緩め方」

それぞれのパターンには、そのパターンから少し外れるための「緩め方」があります。大きく変えようとしなくていい。ほんの少し、緩めるだけです。


「私はNOT OK/あなたはOK」型の緩め方

このパターンの人は、相手に合わせることで関係を保とうとしています。「NOを言うと関係が壊れる」という恐れが背景にあることが多い。

緩め方は、「小さなNOをひとつ言う」ことです。大きな拒絶でなくていい。「今日はちょっと難しいです」「それは私には合わないかもしれません」という、傷つかないくらい小さなNO。

NOを言っても関係が壊れなかった、という体験が少しずつ積み重なると、「自分がNOと言っても価値がなくなるわけではない」という感覚が育ちます。


「私はOK/あなたはNOT OK」型の緩め方

このパターンの人は、相手への不満や「なぜわかってくれないのか」という気持ちが繰り返し湧いてきます。正しさを求めるほど、相手との距離が広がる。

緩め方は、「相手の文脈をひとつ聞いてみる」ことです。「なぜそう思うの?」と聞くのではなく、「そういうふうに感じたんだね」と一度受け取ってみる。相手の側に立つ必要はありません。ただ、「相手にも相手なりの理由がある」という可能性を、少しだけ開いておく。


「私もNOT OK/あなたもNOT OK」型の緩め方

このパターンの人は、関係そのものへの希望を持ちにくくなっています。学習性無力感と呼ばれる状態とも重なりやすい。

緩め方は、「今日受け取ったポジティブストロークをひとつ書き留める」ことです。小さくていい。「ありがとうと言ってもらえた」「目が合って会釈された」。そのくらいの小さな承認でも、意識的に記録することで、「自分の存在が認識されている」という感覚が少しずつ育ちます。


ストロークは「もらう」ものではなく「渡す」ものでもある

ここまで、ストロークを「受け取る」視点で話してきました。でも、もう一つ大切な視点があります。

ストロークは、自分から渡すこともできます。

「ありがとう」「あなたがいてよかった」「気がついてくれてよかった」。そういう小さなポジティブストロークを自分から渡すと、関係の土壌が少しずつ変わります。相手の反応が変わるからではありません。自分が「OK/OK」の立ち位置から動き始めるからです。

諸富祥彦は、承認欲求から外れるための実践として、「まず自分が誰かに承認を渡してみること」を挙げています(※4)。松村亜里も、「幸せトライアングル」に向かう最初の動きは、求める側ではなく「贈る側」に立つことだと述べています(※5)。

ストロークを渡すことは、相手のためだけではありません。自分が「OK/OK」の場所に立つための、実践的な方法です。


今日からできる小さな一歩

このシリーズを通じて、いくつかの「気づき」があった方に、一つだけお伝えします。

今日、誰かにポジティブストロークをひとつ渡してみてください。

「ありがとう」でも、「それ助かりました」でも、相手の目を見てうなずくだけでもいい。言葉でなくていい。「あなたの存在に気づいています」というサインをひとつ、意識的に渡してみる。

それだけです。

「OK/OK」な関係に向かうことは、相手を変えることでも、自分を変えることでもありません。「OK/OK」の立ち位置から、ひとつ動いてみること。そこから始まります。


まとめ

このシリーズでは、3本の記事を通じて「人間関係がしんどい理由」を読み解いてきました。

第1回では、「OK/NOT OK」という4つのパターンで、自分の疲れ方に名前をつけることを扱いました。第2回では、ストロークの欠乏が心理的ゲームを生み出し、繰り返しのパターンを作るメカニズムを解説しました。そしてこの記事では、パターンを知った先に何ができるかを整理しました。

まとめると、こういうことです。

人間関係の疲れは、性格でも相性でもなく、無意識に持っているパターンから生まれます。そのパターンは、承認(ストローク)の欠乏によって強化され、心理的ゲームとして繰り返されます。変化のための第一歩は、「またこのパターンだ」と気づく一瞬です。そして少しずつ、自分から「OK/OK」の立ち位置に向かって動いてみること。それが、疲れを繰り返す関係から、少し楽な関係へと変わる道筋です。

交流分析の研究が示す通り、パターンへの気づきと小さな実践の積み重ねは、自己肯定感と対人関係の質を実際に変えていきます(※1・※2)。一度で変わらなくていい。少しずつ、でいいのです。


参考文献

※1 Torkaman M, Farokhzadian J, Miri S, Pouraboli B. The effect of transactional analysis on the self-esteem of imprisoned women: a clinical trial. BMC Psychology. 2020;8(1):4. PMID: 31931887。交流分析のグループトレーニングが自己肯定感を有意に向上させることをランダム化比較試験によって示した研究。

※2 Seow HY, Wu MHL, Mohan M, Mamat NH, Kutzsche HE, Pau A. The effect of transactional analysis training on emotional intelligence in health professions students. BMC Medical Education. 2022;22(1):376. PMID: 35590318。交流分析のトレーニングが感情知性(感情の認識・調整・活用)を改善することを準実験デザインで示した研究。

※3 Lac A, Donaldson CD. Development and validation of the Drama Triangle Scale: Are you a victim, rescuer, or persecutor? Journal of Interpersonal Violence. 2022;37(9-10):NP4057-NP4081. PMID: 32917106。ドラマトライアングルの3役割を測定するスケールを開発・検証し、関係パターンの測定可能性を示した研究。

※4 諸富祥彦「”承認欲求”、捨ててみた」青春出版社、2022年。承認欲求に振り回される状態から解放されるための実践的ステップを、臨床心理士の視点から提示している。

※5 松村亜里「うまくいかない人間関係逆転の法則」すばる舎、2024年。繰り返される人間関係のこじれを「どろどろトライアングル」から「幸せトライアングル」へ反転させる方法を、ポジティブ心理学の知見をもとに解説している。

※6 Harris T. I’m OK, You’re OK. Harper & Row, 1967. ISBN: 978-0-06-072427-6。交流分析の「4つの人生態度(OK/NOT OK)」を一般向けに解説した書籍。「OK/OK」の状態を「勝ち負けの外側に立つ姿勢」として提示した原典。

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